土地家屋調査士の業務と職責  〜登記屋・測り屋と言われないように〜

最近、マラソンブログが多いので、真面目にお仕事のことも書こうかな。合格発表も終わったことだしね(笑)

土地家屋調査士の業務については、土地家屋調査士法第3条に定められています。不動産という重要な財産の範囲を公文書として法務局に公示することにより、公示された数量が取引の根拠となったり、相続税を申告する基礎となるのです。
土地家屋調査士には倫理規定が定められており、試験に合格し開業しようとする者は必ず「土地家屋調査士倫理綱領」に目をとおし、事務所内の見やすい場所に掲げるのです。


1.使命
不動産に係る権利の明確化を期し、国民の信頼に応える。

皆様が住んでいるこの日本国の土地は、不動産登記法において法務局に登記されています。未登記の場合もありますが。
住んでいる所が自分で所有しているか、もしくは借りているかは問わず、必ず不動産として登記所に公示されていなければなりません。
その土地または建物の数量(面積)を測量し、得られたデータを基にして、正確な図面を作成している作業をしているのが土地家屋調査士です。測量士にはできません。

2.公正
品位を保持し、公正な立場で誠実に業務を行う。

国民の大切な財産の範囲を決める資料を作成し登記申請を行うと、登記官が財産の範囲を認定して、土地家屋調査士が作成した図面が登記所に保管されます。
依頼者や紹介者と業務上結託し癒着してしまうと、第三者から見て公正な判断をしているか疑われてしまいます。
土地家屋調査士が独立士業であるのは、このような理由も一つです。したがって、測量会社や独立行政法人等に雇用されてしまい、土地家屋調査士業務の報酬を土地家屋調査士が直接請求しないで測量会社等が請求するのは違法行為なんですよね。
測量会社が請求し領収した金員を土地家屋調査士に支払うことになるからです。土地家屋調査士が営利法人の株式会社等、利益を追求する会社内で雇用されてしまうと、倫理綱領にある「公正な判断」をすることなく、土地の境界を決めてしまうからなんですよ。極めて公正・公平な業務を行う資格者を、営利法人等が雇用し傘下に置くことは法律で禁止されております。

また、土地家屋調査士の仕事に納期はありません。納期とは、契約した内容を誠実に履行し物品等を収めるまでの期間ですが、登記申請の代理行為は民法上、委任行為と呼ばれるものです。土地家屋調査士の業務においては、土地家屋調査士法第3条に定められている、登記申請の代理行為=法律的な行為なのです。
家を建てるのに工務店と契約しますが、その契約内容は請負契約です。家を建てたなら請負契約書がお手元にあるはずです。請負契約とは、その仕事を完成させるのが目的ですから、いつまでに〜という文言が付け加えられます。この期間を守らないと、約束破り=債務不履行になり損害賠償請求されます。

登記申請を行う上で重要な資料の収集、現地踏査・測量、そして関係地権者の証言の収集、測量結果と収集した資料との整合性等、検証すべき要素が多くあり、全てにおいてことが順調に進むとは言えません。作業の終了期間を定めるのであれば、また、定めたのであれば、その期間は努力目標にすぎません。
したがって、納期は三ケ月であっても、勘違いされないように注釈で行政庁等の事由により遅れる場合があります云々という文言を付け加えています。
一ヶ月で納品しろ!という極悪な業者とは付き合わない方が無難でしょう。一ヶ月間で、必要な作業を誠実に公正にできるのでしょうか。地権者が所在不明、または広範囲に測量しなければならない事象もないとはいえません。財産の範囲=筆界を認定する作業に「納期」はありません。あっても束縛されない努力目標です。
資金的に余裕がない者は、依頼者の理不尽な要求にも強く否定できないのでしょうね。


土地家屋調査士法施行規則第22条 他人による業務取扱の禁止

忙しいとついつい面倒な測量作業を他人に任せてしまいませんか?
赤の他人、測量会社等が測量したデータを鵜呑みにして登記申請をしてはならない、という条文です。
土地家屋調査士は、登記申請に必要な書面に職印を押印するだけの「登記屋」ではありません。現地を単に測量するだけの「測り屋」でもありません。
百聞は一見にしかず。この目で現場を見て、測量の結果を検証しなければならないのです。測量会社等が提出した資料を信用して登記申請を行い、後日、現場に瑕疵が発見されたとしても、責任を負うのは土地家屋調査士です。その大切な職印を押印し、高額な報酬を得ているにもかかわらず、重要な現場作業は赤の他人(下請け人)にやれせて、土地家屋調査士本人は、真夏の太陽にもさらされることなく事務所でのほほんとしている。高額なお金を払う人から見て納得いくのでしょうか。
土地家屋調査士本人の監督下に置かれている補助者のみの作業であっても、現場の詳細を把握し、現地と図面の検証をして初めて赤の他人に測量させていない、と反論できるかもしれません。
監督下に置かれていない者が測量しているのであれば、他人任せと言われても仕方ないでしょう。そう言われないためにも、何をすべきか身を律して考えるべきでしょう。

国家資格であるにもかかわらず、受験生は年々減少しています。不人気資格にさせているのは土地家屋調査士本人でしょう。

悲しいことに、同業者から納期を守らない合理性のある理由を述べよ、と問われたので長々と書きましたよ。
土地家屋調査士業はビジネスだ!!3割バックは当然でしょ!!ってドヤ顔している連中は、法改正されてから騒いで下さいね。
最後になりますが、法令を遵守し、公正な立場で誠実に業務を行って欲しいものです。