新年のご挨拶

旧年中は大変お世話になりました。本年もお客様のご要望に添うよう、努力・研鑽を続けてゆく所存でございます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。


さて、12月15日、仙台国際センターにおいて、岩手・宮城・福島各県土地家屋調査士会の共催による東日本大震災報告会へ参加した。
被災地からの情報はマスメディア等によって目や耳に入ってくるが、実際に被災された方々のリアルな報告、現在の被災地の現状及び復興に携わっている先生方の苦労を肌に感じ取るため報告会へ参加し、二日目は被災地を視察した。



東京駅から「はやぶさ」に乗車。


鉄道ファンである私にとって震災後、全線開通した時は感極まった。
春のダイヤ改正にともなって、最高速度は320キロ、新青森まで3時間を切る。


こちらは「グランクラス

仙台までなら9千円の追加で乗車可能です。
グランチケットを持っていないと、客室内侵入禁止だそうですww


仙台までの乗車時間が短いので、今回はグリーン車のチケットを購入。
300キロという速度の割に、さすがに技術大国の日本、車体の揺れは少なく非常に静かで快適だった。約1時間30分程度で仙台駅に到着。


仙台名物の牛タンを食べ

本当は隣のお姉さんが食べていた「牛タン定食」を注文したのだが、私が注文を間違えてしまい「牛タンシチュー」に。



仙台駅から会場までタクシー。
運ちゃんに「夜の仙台はどうですか?」と尋ねると、「今は復興需要で賑やかだけど、震災前の不況で店が少なく、条例も厳しくなったからかなり混雑するよ」と。条例の内容は聞かなかったが、人も車も多く道路はかなり混雑していた。



仙台国際センターに到着。
全国から400名を超える参加者が講師の話に聞き入った。
講演開始間もなく、震度3の地震が会場を揺らしどよめきが起こったww

開演内容
第1部 被災体験を聞く
第2部 土地家屋調査士と震災業務
第3部 震災と土地家屋調査士

13時開演17時終了。

被災体験では、実際に自分の自宅が津波に飲込まれてゆく動画や、事務所が警戒区域内にあるために、許可証を取得し防護服に着替えて作業した体験等が報告された。

震災業務については、登記所が原発事故により管轄区域が南北に分断され、警戒区域内にある土地・建物の調査の一時立ち入りには、通常業務よりも遥かに手間と時間を要している。
巨大地震による地殻変動によって、基準点・公共座標・筆界への影響調査報告、震災後の相談業務についての内容等が報告された。



会場の外には数多くの写真が展示されていた。

朱線が震災前の境界線。
あるべき道路幅員5.1mが4.8mしかなく、直線なはずの道路が屈曲している。


比較にならないほどの移動が生じている。1.741mもの移動。



B部分の現地写真



筆界と現況の概況説明について



講演後は会場近くのホテルにて開かれた親睦会へ出席。
立食形式の懇親会へも多くの土地家屋調査士が参加し、ビール片手に各県で活躍されている先生方との意見交換等を行い懇親を深めた。
その後は、2次会、3次会、4次会となり、ホテルへ戻り寝たのは3時前か^^

二日目は被災地をレンタカーで視察。
宮城会副会長の案内により、仙台市内の市街地を視察。
レンタカーから被災地に降り立ち、実際に自分らが立っている地盤面が3mも移動していたなんて想像できない。
地形的には横浜市に似ているのかな。遠くに海が見え、斜面に多くの住宅やマンションが建っている。
宅地造成された間知ブロックの擁壁が激しい揺れによって崩壊し、生活道路上にずり落ち覆いかぶさっていた。震災後、1年9ヶ月以上も経過したが復旧の見通しはあるのだろうか。



東松島地区においては、巨大津波により多くの家屋が流され風景が一変し、生活の全てを失った現実を目の当たりにした。
家屋の周りを囲っていたであろう倒れかけてたブロック塀。その傍らに作られたペットのお墓。この土地で育んでいた長い歴史が一瞬にして無になっていた。

海岸沿いの道路は地盤沈下等の影響でマンホールが盛り上がっており、川を渡る橋の手前は急勾配になってしまい、速度を出し過ぎるとジャンプするので危険。早期の復旧を望む。



昼食は海沿いで営業していた食堂でカキ定食を♪





土地家屋調査士はその名のとおり、不動産である土地・建物を調査・測量し、登記申請することを業としている専門資格者であるが、その不動産が大震災によって形を変えられてしまった現実を目の当たりにした。
例えば土地の場合、震災前の形状が間口20mの長方形であったが、震災により間口18mの平行四辺形へ。4mの道路が3mに、という大変形だ。建物であれば、津波によって壁が破壊され、屋根と柱を残して地盤沈下により海面下に没してしまった。


我々が地に足をつけている土地は非常に堅牢であるが、その中心部はドロドロの液状であり、僅かではあるが引力の影響により常に地盤は浮き沈みを繰り返し地殻は移動し続けている。そんな土地に対して所有権という強力な物権が法律により存在しており、その土地の上に建物という所有権があるのが現実。


大震災後、境界標の毀損・亡失等によって土地の境界線が不明確になり、境界標が残されていても、登記されている土地の区画に大きな形状変化があると、不動産取引において支障をきたす。
建物を取壊して建替えるといった行為をする場合、建造物に関する法令上の決まりごと等をクリアーするにも、前面道路や建物を建てる土地が大変形してしまっては、土地という不動産を有効利用することが困難になってしまう。



私が住んでいる東京都調布市は公図地区であり、法務局に地積測量図が備付けられていない土地も数多く存在し、例え備付けられていても境界に関する情報が乏しい図面も多々ある。不動産登記法が改正され、数値化された境界点の情報を地積測量図中に示すように義務付けた。これは、登記された不動産の範囲を明確にした「地図」を作成するために必要不可欠なだけでなく、震災によって土地境界が不明確になってしまうと、境界に関わる紛争が多発し、迅速な復旧・復興作業の妨げになる。巨大地震は必ず起こるのであり、それが30年以内に70パーセントといったような確率の問題ではない。地図等の信頼のおける図面類が存在すれば、地殻変動による移動が相対的な移動なのか局部的な移動なのか比較し検討することが可能である。
平時における筆界復元の手法は、土地の形状変化のない相対的な移動時には使用可能であるが、会場に展示されていた画像の土地のように、局部的な移動が激しい場合、筆界を復元したところでブロック塀等の構造物の移設は困難を極める。
紛争解決能力を備えた土地家屋調査士が、国・公共団体とともに集団和解をする手助けをし、新たな地図を作成することになるだろう。
土地家屋調査士の使命が、不動産に係る権利の明確化を期し、国民の信頼に応えるのであれば、私利私欲に固執せずに、相互に協力しあい、迅速に問題解決に挑む姿勢が重要ではなかろうか。