土地家屋調査士という国家試験

26歳、今から20年前、この業界に入ってからこの資格には全く興味がなかった。サラリーマンで十分でしょ、決まった、与えられた仕事をこなせば十分。そんなスタンスだったな。

ところがだ。それだけでは満足がいかず、追い打ちをかけるような出来事が起こった。
平成18年、父の余命3か月という胃癌宣告を受け、独立開業という野心が生まれたのには遅すぎの試験勉強だ。

平成19年に初めて受験した時は、1点という、とても悔いの残る玉砕にあった。
父は天国へ行き、そしてその息子は不合格者となり地獄へ落ちて行ったのだ。


悔しくて、それはもう悔しくてさ。落とされたら必ず見返してやるという気持ちで合格発表も待たずに、2日後にはもう作図の問題を解き、単語帳を片手に野川を散歩していた。
合格の秘訣なんぞないんだよ。他人よりも努力したものが勝つ。世の中の常識さ。
当たり前のことを当たり前のように日々こなすことさ。
だからといって、必ず合格するとは限らない。


不合格をくらった次の年、平成20年の本試験前に至っては、東京法経学院の答案練習で1位2回、常に上位に元木克幸という名前が載り、早稲田学院の全国模試においても1位を獲得。やられたらやり返す。
それでも本試験前日は不安で緊張していたが、開き直っていたな。
落とせるもんなら落としてみろっ!こんなに努力したのだから合格は当たり前田のクラッカーさ!ってね。


試験会場に着席し、周りの受験生なんぞ敵ではない!冷静に落ち着き、敵は自分自身だと戦った。
努力の甲斐もあり、88.5点で合格したが、トップ合格を狙っていたので不本意な結果となった。

択一は19問正解。
問題なのは建物の書式だ。
建物区分の家屋番号の記載漏れ。
自身の「決めつける解答」が仇となった。


この資格試験において一番ためされている課題は、自分の安易な「決めつける」ということ。
その失敗を肝に銘じ、合格後、独立した自分に対して常に言い聞かせている。「決めつけるな」と。
公図は農民が作製したいい加減な図面だと「決めつけるな」。
境界標があるからそこが筆界だと「決めつけるな」。
当事者が主張している境界が筆界だと「決めつけるな」。
決めつけない業務手法を行っているから、今の自分自身の地位があり、さらに、この業界の持つ重要性が国民に理解されている。
国民からそっぽを向けられたら、国家資格者なんぞ不要でしょう。税金の無駄使いだ。


不合格者は、泣くのは今日で終わりだ。来年の戦いに備え、明日から書式年間千枚以上仕上げることだな。
合格者は、功利主義に走らず、独立開業の意味を、そして土地家屋調査士法を今一度読み直し、熟考すべき。
常日頃から自己研鑽する努力もなく、他人任せの業務手法であるならば、この業界から追放されるでしょう。