境界標

不動産登記法では境界標の定義として「永続性のある石杭又は金属標等の標識」とあります。 一般的に、御影石杭・コンクリート杭・金属標・プラスチック杭を我々土地家屋調査士は「永続性のある境界標識」とみなしています。何故このように定められているかというと、「境界紛争の防止」に重点が置かれています。鉄の鋲もよく使われますが、境界標識としての認識が低いために工事などで取られてしまいます。設置は打ち込むだけで簡単ですが、なるべくなら「永続性」のある標識を入れたいですね。
 ボンドで貼り付けるタイプの金属標もありますが、経年劣化で取れてしまい、境界紛争の防止にはなりません。ブロック塀や万年塀の天端にはよく貼ってありますが(汗)
 高い塀の上(天端)に設置されると、塀が倒れて境界標識も移動します。境界標識がなくなったり移動すると境界紛争の基になります。プラスチック杭は腐らないし、自重も軽いので山の斜面や田畑にはよく設置されています。境界標が重いと、斜面では倒れたり湿地では沈んでしまいます。

 境界標識も時代と共に進化しています。明治時代には「境界木」として宇津木やウシゴロシが使われていました。今現在でも境界木として使用されている地区もあります。
 宇津木は根が浅く低木ですが、根が浅いので斜面に植えると台風などで倒れて転がってしまい、転がった先で根付くと「境界が移動する」となります。根が深く風雪にも耐えられるのが鎌柄(カマツカ)で別名ウシゴロシです。ウシゴロシhttp://shinrin.cool.ne.jp/sub143.html

 大正時代から戦後にかけては、花崗岩で出来た御影石が境界杭として使われました。関東大震災によって被災し復興図が作成された東京都心部には、多くの御影石杭が境界標識として今現在もあります。また太平洋戦争によって被災した地域も復興図が作成され、御影石杭が境界標として使用されました。御影石杭の境界点は、杭の真ん中の直径10mm程度の丸い窪みです。地域によっては丸い窪みが無い石杭もあります。境界点が石の真ん中か角かは地域よって異なります。

 戦後の復興によってコンクリート技術が発達し、境界線上にある工作物も生垣から万年塀、ブロック塀へと変化しました。境界標識もコンクリートを材質にした ものが主流になりました。しかし、昔をよく知っている古老の地主さんは御影石を使ってくれ、とよく言います。
 初期のコンクリート杭は、境界標の頭が十字に切ってあるものが多いです。当時の境界杭はお互いの所有物という認識があったためです。昭和60年代に入ると「越境」という認識が高まり、境界標も角矢印が多く使われました。

犬も歩けば境界標識にオシッコをかける・・・・ではありませんが、街中歩けば至る所に境界標がありますね^^
不動産取引において重要な境界標識についてお話してみました。